硬い光 / やわらかい光  

これまでの4回では、光の方向について書いてきました。
太陽の光を直接浴びている被写体には、これらの話は良く当てはまります。

しかし、現実の光は複雑です。 光源からまっすぐ光が届かず、色々な所に反射し、様々な方向から同時に被写体に当たることもあります。

今回は、光がいくつかの方向から来る時について書きます。登場する場所は、ビルの谷間、雲の下、室内などです。

また、光が「硬い」とか「やわらかい」という表現を紹介します。

10/18追記:いくつかのリンクで、指定したつもりの写真が直接表示されないようです。すいません。

硬い光

光源が1つの点である時、光は1つの方向からだけ当たります。
被写体では明るい部分と暗い部分がくっきりと分かれます。
こうした光を「硬い光」と呼びます。

今まで載せてきた写真の多くが、この「硬い光」によるものです。
・直射日光
・剥き出しのストロボ光
・スポットライト
などが、代表的な硬い光です。

DSC03064のコピー

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硬い光は、メリハリの効いたハードな印象を写真に与えます。
くっきりとした影が被写体の凹凸を強調します。
また、光の方向がはっきりしているので、「逆光」「順光」「サイド光」などの特徴が強くあらわれます。

やわらかい光

一方、光が壁や雲に反射して届いたり、大きさのある照明器具から来る時、被写体の明るい部分と暗い部分がなめらかなグラデーションとして現れます。
こうした光を「やわらかい光」と呼びます。

中学の理科みたいな話ですが、これは各所の反射や散乱によって光の方向がばらつくことによるものです。
・薄曇りの太陽光
・窓辺に流れ込む光(直射日光が入らない時)
・間接照明の光
などが、やわらかい光です。DSC03063のコピー 467813_364239820323711_1771773489_o

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DSC02673のコピー 参考:窓際サイド光の写真 上田義彦 http://www.yoshihikoueda.com/#/p/yume/12

薄曇りの柔らかい光は上から差すことが多いので、それほど方向を感じさせません。

窓際の場合、窓→室内という方向が明確にあります。 やわらかい光はその名の通り、柔らかい印象を写真に与えます。 やわらかい光が横から差せば、ふんわりした影がある種のドラマティックさをもたらします。

なめらかな影のおかげで、曲線を美しく見せる効果もあったり。特に、人の顔の曲線にはぴったりです。 プロのポートレートでは、柔らかい斜光(斜め手前からの光)がよく使われます。下記リンク先をご覧ください。大きな傘でストロボ光を反射させ、適度に柔らかい斜光を作っています。 http://shuffle.genkosha.com/technique/lightingguide/7926.html

 
方向のない光

光があらゆる方向から少しづつ当たるとき、影は消え、被写体の隅々が均一に照らされます。
・ビルの谷間
・分厚い雲の下
・均一な照明の室内
などがこれです。 DSC03062のコピー

DSC03061のコピー

DSC02405のコピー

DSC02864

方向のない光は、光としては均一で平板な印象を生みます。

先述の通り、多少方向が残っていても、影が真下にできる時はこれに似た印象を受けます。

僕は光で写真を飾ろうとばかりするタイプなので、方向のない光に囲まれると何もできなくなって死んだような目をしています。

もちろん、影を作りたくない時には良い光です。

均一さこそを強調したい時 http://urx.nu/cZrZ
やわらかい光より、更に穏やかな光がほしい時 http://urx.nu/d4Ri

そしてもちろん、光による明暗ではない所が大事な写真などに使えます。

次回

次回以降、「光の色」と「夜」について書こうと思います。

順光と斜光 ハッキリvs立体感

前回、光の向きには名前があるということをご紹介しました。

ここでは、「順光」と「サイド光」のとき、写真に何が起こるかを簡単に書きます。

順光

順光とは、カメラから見て被写体の手前から光が当たる状況のことです。カメラマンが光を背負っている方向、とも言えます。DSC03067のコピー
順光の時には何が起こるでしょうか。

すべてがはっきり写る

順光は、カメラから見える場所を強く均一に照らします。影が少なく、かといって光りすぎる部分もない写真ができ、色も正しく再現されます。

ひとことで言えば、全部ちゃんと写ります。

逆光は光を目立たせますが、順光写真は人に光を意識させません。かわりに、被写体の姿に集中させてくれます。

大きな建物や自然のパノラマを、細部までしっかり写したい。そういう時によく使われるようです。DSC09802のコピー

ちょっと話はそれますが、究極の順光写真といえば、たぶんこれです!
ドーン。
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これは1972年、世界で初めて完全な順光で撮られた地球の写真です。通称「ザ・ブルー・マーブル」。どこにも影はなく、細部までしっかりと写っています。だからこそ世界中に流布し、超有名な1枚になりました。

もしサイド光だったら、
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こうなっていたでしょう。

しっかり写っていればそれだけで感動できる。そういうものを見つけたら、順光がおすすめです。

奥行きがなくなる

現実世界には奥行きがあり、両目の視野の微妙な差によって立体的に見えています。一方、写真は平面なのでそれがありません。
そのため、実は僕たちは影の形をヒントの1つにして奥行きを想像しています。

順光写真には影が少ないので、実際に見た景色よりも平面的に、のっぺりと感じられます。逆にサイド光では立体感が強調されます。

人がしかめっ面になる

強い順光では、カメラ目線のポートレート(人物写真)が撮れません。まぶしくてカメラを見れないからです。「笑って!!」と叫ばないでください。無理です。

サイド光

サイド光とは、カメラから見て被写体の横から光が当たる状況のことです。これに関して僕が言えるのは1つだけです。

立体感が出る

サイド光では、被写体の光の当たっている側は明るく、逆側は暗くなります。上で書いた通り、この対比が被写体に立体感を出します。

樹の幹の太さや地面の盛り上がりなどもリアルに感じられます。
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ポートレートでは、彫りが深く見え、ある種のワイルドさが出ることがあります。
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デメリットは、強い影が出てしまい、全体が綺麗に写るというわけにはいかないことです。

次回

以下のサイトに、同じ人形を「順光」「サイド光」「逆光」で撮った写真があります。参考にご覧ください。

SONY デジタル一眼レフカメラα サポートページ  http://www.sony.jp/support/ichigan/enjoy/photo/word2.html
 

次回は、光が複数の方向から来るときのことを書きます。

光の向きと、その名前 

ここまでの2回、逆光の良さをアピールしてきました。

今回は、短いです。
「光の向き」にどのようなものがあるのか、太陽光を例に簡単に触れます。

強い光が1つの方向から差しているとき、写真は光の方向によって大きく変わります。そのため、光の方向には名前がついています。th011

@画像:studio9 http://photo-studio9.com/child_photo/

昼間の屋外であれば、太陽光がたった1つの強い光ですから、光の向きとは太陽光の向きのことと考えて大丈夫です。

上の図は平面的なものではありません。 方向には上下というものがありますから、カメラを上に向ければ、 光の向き

カメラを下に向ければ、 DSC02990のコピー2 のようになります。

ところで、太陽光は多くの時間で上のほうから差します。 DSC02992のコピー

だから、例えば逆光で撮ろうとすれば、 DSC02994のコピー 下から見上げるように撮ることが多くなるんですね。
僕が地面にしゃがみ込んでカメラをいじっている時は、だいたい逆光が欲しくて頑張ってる時です。

DSC02468 逆に、順光で撮りたいときには上から見下ろすようにカメラを向けることが多くなります。

昼間の屋外で気軽なアマチュアが使える光源は、太陽光だけです。被写体が決まったら次に太陽の位置を見て、色々な光の方向で撮ってみましょう。

次回は、順光とサイド光について。 その次は、光源が1つではない時について書きます。